トンカツ(アシャとピストル)
- 作者: 吉田篤弘
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/07/23
- メディア: 文庫
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「それで帰りにトンカツを食べた。他にもハンバーグや焼売やナポリタンのことが頭をよぎったが、ここはひとつトンカツだろうと揺るぎなく決心した。大げさなことを言うようだが、トンカツという食べ物が身近にあるのを心から感謝した」
オーシンイは、食べたのはもちろんヒレではなくロースで、絶対にロースでなければならず、衣がサクッと口の中で立って肉は歯ごたえがあり、ソースは変な味のしない普通のものでーーと妙なこだわりをひとしきり講じました。
「それで初めてものを食った実感がある」
(中公文庫 水晶万年筆「アシャとピストル」p135)
印象的だったトンカツの描写。なぜトンカツが選ばれたのかがなんとなく分かるような気がする。ひき肉料理でもなく炭水化物でもなく、肉の片をあげたトンカツは存在感が強い。