備忘録

本の中の食べ物や日々の道具などについて書いたり消したり直したり

トンカツ(アシャとピストル)

水晶萬年筆 (中公文庫)

水晶萬年筆 (中公文庫)

「それで帰りにトンカツを食べた。他にもハンバーグや焼売やナポリタンのことが頭をよぎったが、ここはひとつトンカツだろうと揺るぎなく決心した。大げさなことを言うようだが、トンカツという食べ物が身近にあるのを心から感謝した」
 オーシンイは、食べたのはもちろんヒレではなくロースで、絶対にロースでなければならず、衣がサクッと口の中で立って肉は歯ごたえがあり、ソースは変な味のしない普通のものでーーと妙なこだわりをひとしきり講じました。
「それで初めてものを食った実感がある」

(中公文庫 水晶万年筆「アシャとピストル」p135)
 印象的だったトンカツの描写。なぜトンカツが選ばれたのかがなんとなく分かるような気がする。ひき肉料理でもなく炭水化物でもなく、肉の片をあげたトンカツは存在感が強い。