備忘録

本の中の食べ物や日々の道具などについて書いたり消したり直したり

骨の多い小形の魚の煮凝(地球)

弥勒 (河出文庫)

弥勒 (河出文庫)

取りわけこの裏浜で獲れる比目魚と赤目張が好物だった。冬の午前、薄暗い台所の棚の上に、永年使い馴れた行手の中で、骨の多い小形の魚が煮凝になっているさまを想像すると、たれだってその冷たい、美味しいうおの身を一箸引き毟って口に入れたくなるのだった。

河出文庫「弥勒」地球 p74)
 稲垣足穂のちょっとした食べ物の描写は、なんだかとても綺麗に思える。ただの魚の煮物ですら、その冷たさが喉を伝っていくような感じがした。