備忘録

本の中の食べ物や日々の道具などについて書いたり消したり直したり

パプリカ・ヘンドル(吸血鬼ドラキュラ)

 「吸血鬼ドラキュラ」を読んで驚いたのは、これが日記と手紙と新聞記事と電報さらには録音日記で構成された小説であったことだ。 録音!1897年の録音機なんて古典の怪奇小説に出てくるとは全く想定外だった。

 小説「吸血鬼ドラキュラ」は西の技術(速記・新聞・録音・電報)によって、東の怪物と戦う「記録」の集合体だった。

 断片的で、視点がぐるぐる変わるけれど、「〇〇の日記」とあれば分かりやすい。この断片で知らされていく情報の面白さって何なんだろう。異なった視点から積み重ねられる情報が吸血鬼の怖さをリアルにしていく。

 さて、このお話の最初に出て来る料理と言えば「パプリカ・ヘンドル」。

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)

トウガラシで調理したチキン料理をたべたが、すこぶる美味なり。ただし、あとでやけにのどが渇いた(備忘。ミナのために調理方法を聞いておくこと。)

創元推理文庫「吸血鬼ドラキュラ」P6の 「ジョナサン・ハーカーの日記」より)

 奥さんのためにレシピを聞きにいく彼に好感度が上がってしまった。

 西ヨーロッパからから東ヨーロッパへ切り替わって出されたジョナサンにとって異国の料理のレシピだ。カルパチア地方の料理とあるけどカルパティア山脈周辺地域ってことかな。

 謎だ、謎だと思っていたけど、そろっと調べてみたらハンガリー料理で"Paprikás csirke"(パプリカーシュ・チルケ)と言うらしい。英語版のWikipediaにも載っていた。

http://en.wikipedia.org/wiki/Chicken_paprikash

 

 チキン・パプリカーシュで調べるとレシピも出て来る。辛いもの苦手なんで作らないだろうけど、見る分にはとってもおいしそう。

  吸血鬼のお話の最初に、「やけにのどが渇」くパプリカを使った「赤い」料理は吸血行為を連想させてくれる。この無駄のない出だしはとてもいい感じだった。